部室の夢

能楽部の部室。白いケーキにナイフを入れて真っ二つに切ることをしている。「自分では真正面を向いていると思っても、実は体が歪んでいて、真正面ではない」という稽古を思い出し、感覚を補正して中央を捉えようとする。いくつかはうまく切れるが、いくつかでは視覚に頼らなかったせいでケーキに拳をめり込ませてしまう。

稽古中にうとうとしてしまったようだ。部室にいる。定例の稽古ではなく、空き時間に来て自由にやっているようだ。日差しは暖かく、風は爽やかで、のどかな雰囲気は卒業式の後のようである。何となく彩度が高く、理想化された雰囲気がある。これが自分の理想なんだろうなと思う。

でも、この部室は今は廃止されたのではと気付き、「僕の夢だからでしょうか?」と先輩に聞く。返答は無いか、覚えていない。窓の外には緑色の海が見える。実際にはプールがあるはずである。戦隊ヒーローのレッドが二人空中に浮いている。

誰かが入ってきたので振り返って挨拶をする。それはビジュアル系寄りのバンドマンのような男で、背が高く、髪は赤っぽく、スーツをスタイリッシュにしたような紺色の服を着ている。渡されたパンフレットには、読みづらいロゴで「コロムサラ アキラ」のような字が書いてある。何なのか訊くと謂れを話してくれるが、早口でぶっきらぼうで、界隈の文化が分かっていることを前提に話しているようで、さっぱり分からない。

後輩の仕舞の合わせが始まる。足袋ではなくスニーカーを履いており、ジュニアラッパーという感じである。型付けのレベルでうまくいっておらず、先輩がリアルタイムで何くれと指摘するが、これでは到底頭に入るまい。不毛である。(通常は合わせ終わってから指摘する)

夢だから情感を楽しもうと思って窓辺に腰掛ける。絵本のように鮮やかな青緑色のプールが波打っている。その向こうに同じ色の海も見えている。突然海の水位が上がり、プールを飲み込んで打ち寄せてくる。現実には、こんな急に水位が上がる津波だったら、ここにいては助かるまいなと思う。少し怖い。波は激しく高速に打ち寄せるが、水位は一定している。

腕のしびれを感じて目が覚める。