皆既日食の夢

夜。合宿場。自分はヒロアカのデクになっている。オールマイトが寝ずの番をしている。明日はヴィランとの開戦である。私は雑魚寝の布団から立ち上がり、一人でトイレに行く。空は青黒く、細い三日月が雲でぼやけながら、時々覗く。

ふと気付くが、月と違う方向に、90度違う方向にも空に光がある。そちらも細いクリーム色の光に見える。月が二つある?確認しようとすると、その瞬間、ガス台の火が点くように、皆既日食の形に光が燃え上がる。青い空に青白い光。皆既日食だ、と驚く。火は円を一周するとすぐに弱くなり、二三回明滅する。これはひどく重要な事象である。「今がその時なのだ」と思う。

その時背後から、細長い獣を連れた敵が現れる。獣はワームのように細長く、毛皮がふさふさしている。私は慌てて逃げ、手すりから階下に飛び降りる。三階~五階くらいの高さであるが、ヒーローなので着地の心配はしない。演出がスローモーションになる。

細い砂浜の夢

Sと美術館か何かに行こうとして、知らない町を歩いている。ナビゲートをSに任せている。

大通りを何本か横切って、目的地近くらしい大通りに出る。そこには工事中らしい、グレーのネットで覆われた建物がある。そこかと思うが、そこではない。その建物を左手に、大通りを上がっていく。脇にフェンスがあり、そのフェンスと道路との間の僅かなスペース(歩道くらい)に砂が積もっている。なんと、これは砂浜らしい。「こんな狭い砂浜見たことない」と笑い転げる。フェンスの向こうには海が見える。

道が合っているか不安なので、Sに何度か「地図見た方が…」と促す。少し坂道を上がって、やはりさっきの砂浜を写真に撮るかと思って振り向くと、工事中で放置されたような遠景と、海と、少しの植物と砂が画面に収まるいい景色である。緑、白、黄色、青が美しい。iPhoneを構えると、丁度人がやって来てしまう。通りすぎるのを待とうとするが、やたら沢山の大学生がやって来る。また天気が非常によく、眩しすぎて明るい部分が色飛びする。明るさを調整しようとするが上手くいかない。太陽の方向を向いているからどうしようもないか。

先行していたSが「どうもこっちらしい」といって戻ってくる。なんと、道なりではなく、300度曲がって、さっきの細い砂浜の後ろを通る道が正解である。トラップのような見つけにくい道なので、また笑い転げる。細い道を通ると、少し開けたところに出る。そこには痛い引っ付き虫の草が四角い敷地に生えていて、真ん中に細い道がある。そこを通るとどう見ても引っ付き虫が刺さりそうなので、私は四角いゾーンの外側を回り込んでいく。Sは細い道を突っ切っていく。

その次には、立派でもない門がある。そこが目的地らしい。古びてみすぼらしく、これも絵になる。私はiPhoneを構えて数歩後ずさり、引っ付き虫の道まで戻って、門を写真に収めようとする。大きな蜂が一匹飛んでいて、それが手元に来たので驚いて目が覚める。

訊く夢

実家。住んだことのない部屋だが、マンション期に似た間取り。二度寝から覚めて朝食を作り始める。両親は出掛けており、弟だけがいる。鍋をコンロにかける。

飯には少し早い、と弟に言う。弟は、でも今夜は父が夕食を豪華にするかもしれないから、と答える。朝食を遅くするとリズムが崩れて、夕食が入らなくなる、という意味。

私は弟に「君はなぜ死んだんだ。動機」と訊く。真面目な話題だが雰囲気はフラットで、弟は答えそうである。二人だけの今のうちに訊いてしまいたい。しかし、外で車が戻ってきた気配がする。弟に「まあ、母が戻ってきたら、この話は後ですることにしてだな。とりあえず答えろ」という旨で、ごにょごにょ言う。

コンロを見に行くと、コンロから火がイソギンチャクのように高く上がっている。鍋を乗せ忘れた、または鍋の乗っていない方を点けてしまった。慌てて直す。

どこかで見た男がスーツ姿で現れ、「久しぶり。あー、ご無沙汰しております」と言う。誰か分からない。小学校のクラスメイトが成長した姿だが、今は親戚のようだ。親戚がどやどやと現れる。父も現れる。

話を拾い聞くに、母は北海道で入院したらしい。目の治療で、サイボーグ化のようなレンズを入れるとか。医師らしき人もいたので、捕まえて訊くと、保育所がどうとか言う。「なぜ保育所?」と訊くと、とにかく何か連携の問題で、保育所でも手続きがあるらしい。家の中で人が動き回り、にわかに慌ただしい。

人工呼吸器の夢

ゲーム画面。自動車修理か何かの工場を運営するが、表向きは整った店構えに対し、奥に行くほど雑木林になってしまっているくらい実態はずさんである。それを客の目から隠すゲーム。うかうかしていると客はすぐ店の中に入り込んでいってしまう。子供が興味津々で林に踏み込んでいく、男女がセックスを求めて駆け込んでいく等。

ワンゲーム終わると、そこで働くパートの女性たちは整列し、年長のパートから一言ずつ注意を受ける。それが終わると昼食休憩に入る。昼食はまかないだが、店内の調理場で自分たちで調理するスタイルである。みんなは厨房に入っていくが、一人だけまかないではなく持参の冷や飯を食べる人物がいる。みんなは「あれで馬力出るの?」と怪しんでいる。

建物に入ると、まず保健室のようなスペースがあり、その奥に調理場や休憩室がある。診断室の床には人工呼吸器に接続された患者が横たわっている。床にシートを引いて、その上に直である。患者は事故か何かに巻き込まれて海中に沈んだらしく、手足を切断され、体のパーツはあまり残っていない感じである。意識はないようだ。機械は複雑で大掛かりである。事故のことはニュースで見たような覚えがある。

みんなは奥で食事を始める。私は何か考えがあって、食事をしないか、何か違うものを食べる気でいる。床に横たわる患者を見ていると、人工呼吸器によって患者は忙しく動かされている。機械によって体を強制的に運動させ、全身に備わっている筋肉を使わせることで呼吸させる仕組みらしい。肺を動かすためか、激しく上半身をのけぞらせたり俯かせたりといった激しい動きが常に行われている。それはダンスのようである。見ていると実際にダンスになる。患者は立ち上がらされて踊る動きをさせられる。私は取材のつもりもあり、それをじっと見ている。

ふと気づくと、患者は呼吸器なしで一人で立ち、踊っている。あっと驚くが、実はそれはアルミホイルのついたてに像が投影されているだけであり、その間、患者本人はついたての背後に隠されている。このように、周りを飽きさせないエンターテイメント的な機能も備わった人工呼吸器である。

その患者のバックボーンが回想の形で流れ始める。患者は女の子であり、昔から特殊な機械を付けて周りをドタバタに巻き込んできた(事故でなく、早い時期からの障害という設定になっている)。機械によって坂を駆け上がると、鉄の扉にぶつかり、中から大量のガラス瓶が崩れ落ちてきてぶつかる、等(ええっ!?ぶつかった!?と思う)。両親や周りは身体が不自由な本人のためにセックスまで提供しようとしたが、それについては本人が「ほっておいてくれ」というので取りやめになったらしい。ここでも私は少し驚くが、周りの人は「もともと頭部の機能はほとんど残っていない人だから、(キスに関しては)心理的に大した問題ではない」という。

その子をずっと見続けてきた、銀髪で太り気味の背の低い小僧が登場している。小僧はその子が好きで、その子が本当に言いたいことが何かを常に考えている。少女が現在の昏睡に入る前に残した「なんでなの?」という走り書きについても、「なぜいつも傍にいた小僧がいないのか」という意味で書いたのだと考えている。小僧はその時たまたまいなかったのだ。そうしたことを悔いつつ、小僧はさっきも、少女が踊っている横でブレイクダンスを踊り、一緒の時間を過ごそうとしていた。人情漫画っぽいキャラクターである。

漫画分析の夢

弟に最近読んだ漫画の分析を語る。

漫画はロボットものであり、SSSS.グリッドマンの感じである。シルエットでの作画省略が目立つが、逆に言えばシルエットだけでロボットや怪獣のキャラクターがだいたい伝わるようになっているデザインがすごい、とか言っている。白黒漫画だが、別のページではフルデジ作画っぽさの目立つフルカラーの漫画になっている。女の子の髪の房が細かくブラシで描かれていて、そこにかなりコストがかかってそうにみえるが、多分ブラシ化してたりするんだろう。

「ばくおん!」の話もする。現実には「ばくおん!」を読んでいなく、夢中の漫画はけいおん!っぽい。一巻は鬼太郎と同じ文庫本の体である。こたつ机に最近読んだ漫画が積み重ねられている。弟がディズニーランドのチケットは何円かと訊いてくる。たしか千円、と答えるが、それはおかしい、と返ってくる。漫画の中のコマを参照し、そこにはディズニーランドの知識が書かれていて、いついつより改訂によりいくら、云々。こういう、各回にテーマがあって蘊蓄や説明をネタにキャラをアクションさせるのが、日常ものを長編化するテクニックのひとつで、云々。

溶けた男の夢

帰省している。

病院か何かに勤務しているイメージ。ゲーム的なものでの勝利は、死期の近い患者にとって、現世での重荷にならない透明な持ち物であり、いいことである、という考え。冬の凍った湖と空。

母と家にいる。弟を風呂に入れるという。弟は障害を負って死期が近く、介助が必要になっている。昏睡の時間が長く、実家に来てもまだ話していなかった。母がインターホンのような機械で弟に話す(ナースコール的な機器)と、弟は費用のことを考えて遠慮したようだ(入浴には高い費用がかかる)が、押し切る。いつ危険な状態になるか分からない状況なので、今日風呂に入れることができるのは誰にとっても(本人にも)幸いである。

私は北側の弟の部屋に行く。弟は床に敷いた布団に寝ている。骨のように痩せ細り、衰弱のため身体の関節が変な風に曲がって、白目をむき、動きはのたうつようで異様である。それは溶けた男のようである。私は弟に、私が来たことともう数日滞在することを伝える。下手に腕を掴んだりすると骨折したりしそうで躊躇われるが、肩を掴む。弟は、もうあまり目が見えないが、顔を触れば形が分かるといって私の顔に触れる。受け答えはしっかりしている。私はどこでもいくらでも触れて確認すればよいと答える。やり取りには温かみがある。