祖母の夢

夕方から何か用事がある。京都のような場所にいる。

時間が浮いたので、喫茶店のような、廃小学校のような建物に入る。そこの二階には医者か、教師がいて、真面目そうな良い雰囲気である。私はかねてから疑問に思っていたことを教師に訊く。教師は黒板を使って親切丁寧に教えてくれる。それは黒板に青のチョークと白のチョークを混ぜて使った場合、青が見えなくなる場合と見える場合とがあるのか、といったことである。結論としては、そういうことはあるが、どのみち大差はない、といったようなことである。私は納得し、礼を言う。持ってきたチョコレート菓子の大袋を二袋、「皆さんで召し上がって下さい」と置いていく。看護婦もいる。

一階に降りる。机に置いておいた「手塚治虫キャラクター図鑑」数冊をバッグに回収する。忘れていくところだった。荷物が重い。外に出て荷物を詰め直す。テラス席には猫が二匹いて、うなり声を上げている。非常に機嫌が悪いのか。近くでかがむのは怖いが、気にしないようにして荷物を詰める。

部屋に荷物を置いていこうと思う。道で祖母に会う。祖母は認知症等で療養施設にいるはずなので、「一人で出歩いたりしていいんだ」と驚きながら言う。祖母は十年前くらいの外見で、受け答えが割合しっかりしている。私のことも認識している。祖母は車で送ってくれる。「運転していいんだ」と少し不安になる。祖母は「この地域の人のバスの中での不親切さは度を越している」と愚痴る。私は曖昧に肯定しながら聞く。

京都でいうと百万遍の南西角に私の下宿があり、祖母の家はその南にあるようだ。私は部屋に荷物を置いてから、用事に向かおうと考えている。東大路通りの東側の駐車場に祖母は停め、車を降りて横断歩道を渡る。そこは三条烏丸あたりのようでもある。信号が変わりかけていて、私は斜めに渡る。渡った後の路地で、祖母はいきなり前方にカバンを投げる。黄色い手提げ鞄である。私は驚いて「何で投げたの」と言う。祖母は分からないと言い、カバンを拾う。歩いていくと、前方に港がある。祖母はいきなり走り出して海に飛び込む、あるいは「飛び込んだらどうしよう」と私が心配する。一緒に飛び込んで助けようとするのは危険であると聞く。通報して助けを呼ぶべきだろうが、まだ溺れているわけではないのに、飛び込んだ段階で呼ぶべきだろうか。呼ぼうにも、さっきの横断歩道の住所も分からない。

ふと、祖母は既に亡くなっていることを思い出す。だからこのような心配をする必要はなかったのだ。