鉄板の夢

実家のリビングにいる。夕食はホットプレートを使うものらしく、準備が始まっている。

我々家族は旅行帰りらしい。父が台所に行って何か飲み物を飲んでいる。僕も何か飲みたいと思って冷蔵庫を開けるが、飲み物だと思った容器が調味料だったりして、欲しいものが見当たらない。「ここにあるよ」などのサポートは家族からは得られない。若干不満に思うが、そこまで不満には思わない。飲み物はまあいいやと諦める。

テーブルで食事が始まっている。ふと、さっき鉄板の上に自分のヘアクリップやメガネを置いていたことに気付く。メガネやヘアクリップは置きっぱなしのまま食材に混ざり、プラスチック部分が溶けてしまっている。あわてて箸でつまんで引き上げるが、完全に駄目である。「ちょっと試しに」と思って自分で置いたものだが、ここまで溶かすつもりはなかった。よく使う道具だったので悲しくなる。母や弟は「あーあ」というくらいのテンションで見ていて、驚いたり嘆いたりはしない。他人行儀というよりはむしろ楽な距離感だが、違和感はある。

さらに鉄板を見ると、クリアファイルとそれに入ったタオルや書類といったものが食材の下に置いてある。これは僕のものではなく、母か弟が置き忘れたものだろう。「置き忘れてるよ!」と二人に言う。特に二人が慌てるということはない。

リビングを離れ、トレイに何かをセットして本棚にしまってやる。(よく分からないが、新しく導入された器具をセットしているらしい)僕のこの場での様子は家族と少しずれていて、何か妙にナイーブらしい。僕は「ともかくこの後、弟の死についてあれから弟がどう考えてきたか、訊いて話し合いたい」と思う。その瞬間、リビングにいる弟と既に死んだ弟がイコールであることに初めて気が付く。既に死んでいるその当人なんだから、話し合うことはできない。ナンセンスなことを考えてしまったのが可笑しく、情けなくもあって、激しく笑う。リビングから「不気味な笑いだ!」と突っ込みが入る(「めしにしましょう」風)。

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