死化粧師の夢

山奥で研修あるいは稽古に参加している。規模は大きく、200人くらいの参加者がいるように思える。

地面に双六の升目があり、陣取りゲームをしている。

泥だらけの場所でKと組手をしていて、泥だらけになる。激しくやり過ぎて、両手の指が全て絆創膏とアザだらけになり、シクシク痛む。

戦闘訓練は一時休み、巨大なゲームセンターのような場所で別の業務をする。Kは気遣ってくれる。しかし、急に全身がだるくなって動けなくなり、床に敷いてある布団に横たわる。監視員に見つかると罰せられるので、何とか這い出して辺りをさまよう。四肢の力が抜け、立てない。

映画のストーリーだったことになる。主人公の女の子は、テーマパークのような場所で課題に向き合っている。重ちーのような姿のいじめっ子に嫌がらせされるも、持ち前の明るさでクリアしていく……というような筋書。

主人公は新米のタコゾネスだったことになる。大成した後の逸見エリカのような先輩に指導される。〆の大訓練は2チームに分かれて行われるが、その際、味方チームの初代リーダーを勤めた大先輩らしい。一方、敵役の初代リーダーは別の有名な先輩で……といった話が盛り上がる。女学園もののノリ。

タコゾネスがインクリングに変装して、インクリングのテーマパークに紛れてウソの案内をする。そういう趣向の訓練。先輩が事前に注意してくれる。

「あんた喋った後に小さく鳴き声出すのやめな。それでバレるよ」
「これは習性なんですよぅ」

ウソの案内を無事終えるが、結局小さい鳴き声は出てしまっている。

映画のエンディング。登場した人物が一人ずつ描かれる。重ちーのようないじめっ子は、最後はツバを吐きつつも主人公の女の子に手を振り、応援する(ちょっと迷惑だが)。

カメラは地下に降りていく。そこには人気のないモールがあり、床や壁は白っぽく、仮面ライダー俳優のような外国人俳優のような男たちがいる。彼らは英語で喋っており、(しまった、字幕版じゃなかったかな)と僕は思う。ショーウインドウの中にはテレビがあり、スター・ウォーズの「フォースに目覚めるシーン」が流れている。ヨーダが映っている。何か、離れた場所で事態が動き出したのだ。このパートは続編の予告のらしい。

場所が変わり、そこから買い出しか何かで車に乗って出発する。Kも乗っている。

引率の教師のような人物が運転している。その運転は荒っぽく、大丈夫かなと思っていると、突然無理な追い越しをし始める。

「うわあ先生それは無理です!」

到底無理だろうという車と車の隙間を通過しようとして、ミラーを粉々に破壊してしまった。しかし先生はさらにアクセルを踏み、このまま逃げ切ろうとする。やがてパトカーが駆けつけ、我々は追い詰められしまう。

車は止められ、現場検証が始まる。我々の車の後部座席には事故の犠牲者が(いつの間にか)積み込まれている。刑事がそれを運び出しながら「ホトケだ」とか何とか言う。その通り、犠牲者は既に息絶えている。

犠牲者は背広を着た30代前半くらいの男で、ぱっと見外傷はない。いや、左足のつま先がスッパリ欠けている。断面からは赤紫色のシャーベットのような血が染み出ている。

刑事の一人が犠牲者を解体し始めている。左足の脛を縦に半分にスライスし、断面から血を絞り出している。そういう血抜き作業なのだろう。取材しようと思ってその断面をジッと見る。人体の断面は白地に紫の線で升目が書かれており、方眼紙のようだ。毛細血管か何かだろう。植物の断面の顕微鏡写真に似ている。それをぎゅっと絞ると赤紫色の血が滲み出てくる。

よく見れば、解体をしている刑事はJである。作業について訊くと、Jは仕事をしながら答えてくれる。曰く、犠牲者の頭の皮を剥いでおいて、あとで立て掛けた板に沿わせながら染料を流す。そうやって毛髪を綺麗に染めてやる。そういう作業があるらしい。つまりJは死化粧師をやっていて、人体をパーツ単位で整えて葬儀までに組み立て直すらしい。

僕は、氏が意外な職能を身に付けることになった経緯が気になり、尋ねる。

「しかしまた、いつの間に死化粧師を始めたんですか?」
「え?」(聞き取れなかったらしい)
「死化粧……エンバーミングを始めたんですか?」
「ああそれは」

玄関のチャイムが鳴って目が覚める。

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