手塚治虫の新作の夢

手塚治虫タッチの漫画として進行する。

日本の野山を日本軍の兵士が敗走している。少数。敵兵に追われている。ススキ野のように背丈ぐらいのまばらな植物の間を縫って歩く。いつしか敵兵と日本兵は混じって歩いているが、互いを認識していない。舞台的表現。「組になるには鹿もいない」という歌がモノローグで書かれる。「隠れられる偽装先もない」というニュアンス。絵は確かに手塚治虫タッチだが、不気味で手塚治虫離れしている。

兵たちは捕まり、地下の秘密施設に入れられる。戦争は既に終わっており、日本兵も敵兵も非公式の活動である。日本兵の荷物は水槽に入れられ、その中に携帯電話もある。

敵兵「通信機器を持ってないだろうな」
日本兵「スマホ」

敵兵「何!まずい!」あわてて水槽を確かめようとする
日本兵「ウソだよ、wifiがあるわけねえじゃねえか」

敵兵「なーんだ」
日本兵「ガラケーだから逆に通じるんだ!」

時代設定を無視したギャグにより、情報は漏れていた。

その展開は無視して、施設から敵国の金持ちに電話がかかる。金持ちは水木しげるの顔(水木しげる漫画の中の)であり「珍しいキャストだ」と思う。敵国の金持ちは、捕まって洗脳された日本兵の「懺悔」を受け、日本兵を「赦す」。金持ちは何らかの形で安全と自己満足を買っているものとみえる。

作者(手塚治虫)が登場する。捕まった人の一人という設定で、漫画家として苦労しているというネタを喋りまくる。他漫画家への黒い感情が勢いよく書かれたあと、「でもこれしかないんですヨッ!」と言いながら、捕まっているにもかかわらず原稿をすごい勢いで仕上げている(擬音「ババババーッ」)。手塚治虫のデザインが二頭身に近く、顔もカートゥーン寄りで見たことがないもの。鬼気迫る勢いと、手塚治虫らしい展開でありながら手塚治虫らしさを逸脱するぶっちゃけに驚く。

この辺りでうっすら目が覚め、オチまで見ようと試みるが、手塚治虫を紹介する雑誌記事のような紙面になり、うやむや。手塚治虫が幼い頃別れた友人との交流を描く「オレもう歩けへん」という漫画の紹介がされている。これもらしくない。「この世界の片隅に」風。

さらにオチを見ようと試みると、断片的に展開が挟み込まれる。ここからは混濁し、見た順番も怪しい。

捕まった兵が施設の中を脱走、あるいは侵入しようと逃げ回る。トイレの個室のドアが大量にあり、ドアを開けるとまたドアという空間を進んでいく。

ドカベンの岩鬼と山田を合わせたような大男が主人公ということになる。主人公の妹が殺される。主人公は軍でやってきたスパイ行為、あるいは捕まって行われた非人道行為の記憶を伏せて暮らしている。主人公は元敵兵の金髪の女(和装している)と暮らしている。金髪は記憶を失っている。

脱走する金髪の女が、施設に侵入していた兵たち(その中に主人公の男もいる)と出会う直前のシーン。女はトイレのドアだらけの空間を進んでいく。中で人が用を足している部屋も混ざっている。下の隙間から足を見て、避けて進んでいく。マグリットっぽい。

男はついにタブーを破り、過去の記憶を話すことになる。施設に置いてきた何らかが何十年ごしに作用し、何らかの応報が発生したらしい。金髪の女は何のことだか分からないが、軍に関わる単語を聞くと何かを思い出してしまいそうになる。

時間軸がかなり戻る。金髪の女と主人公の妹は旧知であり、妹が殺された際、真実を伏せて気丈らしく振る舞わなければならない場面が描かれる。「はい……はい……○○さん(妹)はデキもようてわたくしはいつも助けられてばかりで、かろうじて卒業したというような昔の有り様で……云々」

男は若者に混じって剣道をしているが、腕はよくなく、ただカニのように身を固めて試合をやりづらくさせるので疎んじられている。タブーを破るのとは別の世界線か。

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