訊く夢

実家。住んだことのない部屋だが、マンション期に似た間取り。二度寝から覚めて朝食を作り始める。両親は出掛けており、弟だけがいる。鍋をコンロにかける。

飯には少し早い、と弟に言う。弟は、でも今夜は父が夕食を豪華にするかもしれないから、と答える。朝食を遅くするとリズムが崩れて、夕食が入らなくなる、という意味。

私は弟に「君はなぜ死んだんだ。動機」と訊く。真面目な話題だが雰囲気はフラットで、弟は答えそうである。二人だけの今のうちに訊いてしまいたい。しかし、外で車が戻ってきた気配がする。弟に「まあ、母が戻ってきたら、この話は後ですることにしてだな。とりあえず答えろ」という旨で、ごにょごにょ言う。

コンロを見に行くと、コンロから火がイソギンチャクのように高く上がっている。鍋を乗せ忘れた、または鍋の乗っていない方を点けてしまった。慌てて直す。

どこかで見た男がスーツ姿で現れ、「久しぶり。あー、ご無沙汰しております」と言う。誰か分からない。小学校のクラスメイトが成長した姿だが、今は親戚のようだ。親戚がどやどやと現れる。父も現れる。

話を拾い聞くに、母は北海道で入院したらしい。目の治療で、サイボーグ化のようなレンズを入れるとか。医師らしき人もいたので、捕まえて訊くと、保育所がどうとか言う。「なぜ保育所?」と訊くと、とにかく何か連携の問題で、保育所でも手続きがあるらしい。家の中で人が動き回り、にわかに慌ただしい。

人工呼吸器の夢

ゲーム画面。自動車修理か何かの工場を運営するが、表向きは整った店構えに対し、奥に行くほど雑木林になってしまっているくらい実態はずさんである。それを客の目から隠すゲーム。うかうかしていると客はすぐ店の中に入り込んでいってしまう。子供が興味津々で林に踏み込んでいく、男女がセックスを求めて駆け込んでいく等。

ワンゲーム終わると、そこで働くパートの女性たちは整列し、年長のパートから一言ずつ注意を受ける。それが終わると昼食休憩に入る。昼食はまかないだが、店内の調理場で自分たちで調理するスタイルである。みんなは厨房に入っていくが、一人だけまかないではなく持参の冷や飯を食べる人物がいる。みんなは「あれで馬力出るの?」と怪しんでいる。

建物に入ると、まず保健室のようなスペースがあり、その奥に調理場や休憩室がある。診断室の床には人工呼吸器に接続された患者が横たわっている。床にシートを引いて、その上に直である。患者は事故か何かに巻き込まれて海中に沈んだらしく、手足を切断され、体のパーツはあまり残っていない感じである。意識はないようだ。機械は複雑で大掛かりである。事故のことはニュースで見たような覚えがある。

みんなは奥で食事を始める。私は何か考えがあって、食事をしないか、何か違うものを食べる気でいる。床に横たわる患者を見ていると、人工呼吸器によって患者は忙しく動かされている。機械によって体を強制的に運動させ、全身に備わっている筋肉を使わせることで呼吸させる仕組みらしい。肺を動かすためか、激しく上半身をのけぞらせたり俯かせたりといった激しい動きが常に行われている。それはダンスのようである。見ていると実際にダンスになる。患者は立ち上がらされて踊る動きをさせられる。私は取材のつもりもあり、それをじっと見ている。

ふと気づくと、患者は呼吸器なしで一人で立ち、踊っている。あっと驚くが、実はそれはアルミホイルのついたてに像が投影されているだけであり、その間、患者本人はついたての背後に隠されている。このように、周りを飽きさせないエンターテイメント的な機能も備わった人工呼吸器である。

その患者のバックボーンが回想の形で流れ始める。患者は女の子であり、昔から特殊な機械を付けて周りをドタバタに巻き込んできた(事故でなく、早い時期からの障害という設定になっている)。機械によって坂を駆け上がると、鉄の扉にぶつかり、中から大量のガラス瓶が崩れ落ちてきてぶつかる、等(ええっ!?ぶつかった!?と思う)。両親や周りは身体が不自由な本人のためにセックスまで提供しようとしたが、それについては本人が「ほっておいてくれ」というので取りやめになったらしい。ここでも私は少し驚くが、周りの人は「もともと頭部の機能はほとんど残っていない人だから、(キスに関しては)心理的に大した問題ではない」という。

その子をずっと見続けてきた、銀髪で太り気味の背の低い小僧が登場している。小僧はその子が好きで、その子が本当に言いたいことが何かを常に考えている。少女が現在の昏睡に入る前に残した「なんでなの?」という走り書きについても、「なぜいつも傍にいた小僧がいないのか」という意味で書いたのだと考えている。小僧はその時たまたまいなかったのだ。そうしたことを悔いつつ、小僧はさっきも、少女が踊っている横でブレイクダンスを踊り、一緒の時間を過ごそうとしていた。人情漫画っぽいキャラクターである。

漫画分析の夢

弟に最近読んだ漫画の分析を語る。

漫画はロボットものであり、SSSS.グリッドマンの感じである。シルエットでの作画省略が目立つが、逆に言えばシルエットだけでロボットや怪獣のキャラクターがだいたい伝わるようになっているデザインがすごい、とか言っている。白黒漫画だが、別のページではフルデジ作画っぽさの目立つフルカラーの漫画になっている。女の子の髪の房が細かくブラシで描かれていて、そこにかなりコストがかかってそうにみえるが、多分ブラシ化してたりするんだろう。

「ばくおん!」の話もする。現実には「ばくおん!」を読んでいなく、夢中の漫画はけいおん!っぽい。一巻は鬼太郎と同じ文庫本の体である。こたつ机に最近読んだ漫画が積み重ねられている。弟がディズニーランドのチケットは何円かと訊いてくる。たしか千円、と答えるが、それはおかしい、と返ってくる。漫画の中のコマを参照し、そこにはディズニーランドの知識が書かれていて、いついつより改訂によりいくら、云々。こういう、各回にテーマがあって蘊蓄や説明をネタにキャラをアクションさせるのが、日常ものを長編化するテクニックのひとつで、云々。

溶けた男の夢

帰省している。

病院か何かに勤務しているイメージ。ゲーム的なものでの勝利は、死期の近い患者にとって、現世での重荷にならない透明な持ち物であり、いいことである、という考え。冬の凍った湖と空。

母と家にいる。弟を風呂に入れるという。弟は障害を負って死期が近く、介助が必要になっている。昏睡の時間が長く、実家に来てもまだ話していなかった。母がインターホンのような機械で弟に話す(ナースコール的な機器)と、弟は費用のことを考えて遠慮したようだ(入浴には高い費用がかかる)が、押し切る。いつ危険な状態になるか分からない状況なので、今日風呂に入れることができるのは誰にとっても(本人にも)幸いである。

私は北側の弟の部屋に行く。弟は床に敷いた布団に寝ている。骨のように痩せ細り、衰弱のため身体の関節が変な風に曲がって、白目をむき、動きはのたうつようで異様である。それは溶けた男のようである。私は弟に、私が来たことともう数日滞在することを伝える。下手に腕を掴んだりすると骨折したりしそうで躊躇われるが、肩を掴む。弟は、もうあまり目が見えないが、顔を触れば形が分かるといって私の顔に触れる。受け答えはしっかりしている。私はどこでもいくらでも触れて確認すればよいと答える。やり取りには温かみがある。

蛙の二人組の夢

住んだことのない部屋だが、実家らしい。母が出掛け、家に一人である。そこに、この世にいないはずの二人組が訪れる。彼らは陽気な鬼か、あるいは私が映画を観て作ったイマジナリーフレンドの類であり、私は好意を抱いている。私は子供のようになっていて、彼らを一生懸命もてなす。コーヒーを入れたり食べ物を出したりする。

二人のうち一人は私と会話できるが、もう一人は私の声が聞こえないらしい。聞こえる方の一人が間に立ってくれたらいいのに、と思う。私は存在しないものと話していることを理解していて、この機会を貴重に思う。彼らは話を分かってくれる。

やがて二人は帰っていく。もうすぐ弟が来るから、彼に見つからないように帰った方がいい、と私は勧める。なぜなら二人は蛙の化身であるから。とはいえ、弟が蛙をいじめるところは特に見たことがないが。(これは異界の友達と別れるシーンのお約束である)

二人が帰ったあとも、通常と違う意識状態は続いている。彼らのために片付けた布団や、用意したコーヒーは実際物理的にそうなっていて、この出来事は夢ではない、と思う。私は私の目線が低く、小さくなっていることに気付く。これも何かの錯覚に思われ、いずれは元に戻ってしまうと理解している。棚の上のテレビに下から手を伸ばすが、届かない。普段ならテレビは自分の背丈より下にあるはずである。実際届かないのは、単なる錯覚では説明がつかないぞと思う。膝立ちになっているのかもしれない、と思うが足の裏で確かに床を感じている。弟が似た体験を報告していた気がする。背丈は気を抜くと戻ってしまいそうではあるが、意識すれば低いまま保てる。

私はベランダに出るが、錯覚によって下に落ちてしまうかもしれないと思い恐怖する。あるいはそれが弟の死因かも。気を引き締めて、出たのとは違う窓までたどり着く。二人はベランダのベンチに座っていたかもしれない。回想かもしれない。

二人のうち一人は、少年の頃に身を売っていたが、自分は沢山の女の子と付き合っているのだ、という妄想によって自己を守っていた人物である。与えられる女装用のプレゼントは、自分が女の子のために用意したものだと考えるわけである。この妄想は、彼の現在の過ごし方に影響を与えている。そういう妄想的な人物たちがひとつの家に寄り合って住む、というストーリー。手塚治虫の「すべていつわりの家」はこの映画が元ネタかもしれない。

直方体水晶の夢

マンション時代の実家。弟の本棚を見る。自分が置いていった本などが入っている。そこに直方体の水晶のお土産品がある。それはディズニー映画のグッズか、博物館のお土産品で、直方体のそれぞれの面にCGで古代生物が映っている。

触っているうちに操作方法が分かってくる。直方体の面を見ながら、辺のところを指で触ると、それがタップとなってコンテンツが再生される。生物ごとに違うコンテンツが入っている。音声も出る。

それぞれの面のコンテンツを確かめていると、父がノートパソコンを持ってやってきて、作業場があるのは悪くないな、と言う。

ある面では、海岸の地盤がいかにして山奥まで運ばれて地下に沈んだか、という説明がCGで流れる。化石の発見された地盤の話である。洪水が地盤を切り取って押し流し、山上で渦を巻いて沈んだのである。場所は秋田である。父方の祖母がそれに疑問を持ってきたので、どういう話なのかを説明する。

地元の友人にこれを見せていると、譲ってくれないかと言われる。しかし自分も段々持ち帰りたくなっていたので、断る。たぶん、映画に伴って売られたグッズなので、いま手に入れる方法はないだろう。

祖母の夢

夕方から何か用事がある。京都のような場所にいる。

時間が浮いたので、喫茶店のような、廃小学校のような建物に入る。そこの二階には医者か、教師がいて、真面目そうな良い雰囲気である。私はかねてから疑問に思っていたことを教師に訊く。教師は黒板を使って親切丁寧に教えてくれる。それは黒板に青のチョークと白のチョークを混ぜて使った場合、青が見えなくなる場合と見える場合とがあるのか、といったことである。結論としては、そういうことはあるが、どのみち大差はない、といったようなことである。私は納得し、礼を言う。持ってきたチョコレート菓子の大袋を二袋、「皆さんで召し上がって下さい」と置いていく。看護婦もいる。

一階に降りる。机に置いておいた「手塚治虫キャラクター図鑑」数冊をバッグに回収する。忘れていくところだった。荷物が重い。外に出て荷物を詰め直す。テラス席には猫が二匹いて、うなり声を上げている。非常に機嫌が悪いのか。近くでかがむのは怖いが、気にしないようにして荷物を詰める。

部屋に荷物を置いていこうと思う。道で祖母に会う。祖母は認知症等で療養施設にいるはずなので、「一人で出歩いたりしていいんだ」と驚きながら言う。祖母は十年前くらいの外見で、受け答えが割合しっかりしている。私のことも認識している。祖母は車で送ってくれる。「運転していいんだ」と少し不安になる。祖母は「この地域の人のバスの中での不親切さは度を越している」と愚痴る。私は曖昧に肯定しながら聞く。

京都でいうと百万遍の南西角に私の下宿があり、祖母の家はその南にあるようだ。私は部屋に荷物を置いてから、用事に向かおうと考えている。東大路通りの東側の駐車場に祖母は停め、車を降りて横断歩道を渡る。そこは三条烏丸あたりのようでもある。信号が変わりかけていて、私は斜めに渡る。渡った後の路地で、祖母はいきなり前方にカバンを投げる。黄色い手提げ鞄である。私は驚いて「何で投げたの」と言う。祖母は分からないと言い、カバンを拾う。歩いていくと、前方に港がある。祖母はいきなり走り出して海に飛び込む、あるいは「飛び込んだらどうしよう」と私が心配する。一緒に飛び込んで助けようとするのは危険であると聞く。通報して助けを呼ぶべきだろうが、まだ溺れているわけではないのに、飛び込んだ段階で呼ぶべきだろうか。呼ぼうにも、さっきの横断歩道の住所も分からない。

ふと、祖母は既に亡くなっていることを思い出す。だからこのような心配をする必要はなかったのだ。

弟2号の夢

実家にいる。架空の建物で、リビングを出るとすぐ駅前になっていて、喫茶店がある、という場所。

朝、喫茶店に行こうとすると、弟に似た少年が行き過ぎていくのを見る。その顔立ちは、明らかに別人ではあるが、弟に似た雰囲気がある。服の色のセンスも似ているような気がする。緑色のベストに乳白色のシャツ、青いズボンという組み合わせである。

家に帰ると、先ほどの少年が家におり、「〇〇(弟の名前)2号」として親しまれている。父母と、架空の祖父母のような人がいる。弟2号は宇宙物理か何かの話をしていて、祖父母に「賢いねえ」と感心されている。

僕は動物図鑑を持って喫茶店に行こうとしている。それは、昔の未確認動物などが載った面白そうな図鑑である。例えば、「ドムドム」という名の黒い巨体の動物の絵などが載っている。それは恐らく巨大なタスマニアデビルを誤認したもの思われる。

その図鑑と、もう一冊何かを持っていこうと思い立って本棚を眺めているが、何を思い立ったのか思い出せず、そのままぐずぐずしている。正面から弟2号がやって来る。その顔立ちは年少であり、可愛げがある。しかしよく見ると、顎に無精髭のような質感が見え、大人のようにも見えてくる。再び見ると頭が不自然に膨らんでいるようでもある。小人症の大人とかなのかもしれない?

部室の夢

能楽部の部室。白いケーキにナイフを入れて真っ二つに切ることをしている。「自分では真正面を向いていると思っても、実は体が歪んでいて、真正面ではない」という稽古を思い出し、感覚を補正して中央を捉えようとする。いくつかはうまく切れるが、いくつかでは視覚に頼らなかったせいでケーキに拳をめり込ませてしまう。

稽古中にうとうとしてしまったようだ。部室にいる。定例の稽古ではなく、空き時間に来て自由にやっているようだ。日差しは暖かく、風は爽やかで、のどかな雰囲気は卒業式の後のようである。何となく彩度が高く、理想化された雰囲気がある。これが自分の理想なんだろうなと思う。

でも、この部室は今は廃止されたのではと気付き、「僕の夢だからでしょうか?」と先輩に聞く。返答は無いか、覚えていない。窓の外には緑色の海が見える。実際にはプールがあるはずである。戦隊ヒーローのレッドが二人空中に浮いている。

誰かが入ってきたので振り返って挨拶をする。それはビジュアル系寄りのバンドマンのような男で、背が高く、髪は赤っぽく、スーツをスタイリッシュにしたような紺色の服を着ている。渡されたパンフレットには、読みづらいロゴで「コロムサラ アキラ」のような字が書いてある。何なのか訊くと謂れを話してくれるが、早口でぶっきらぼうで、界隈の文化が分かっていることを前提に話しているようで、さっぱり分からない。

後輩の仕舞の合わせが始まる。足袋ではなくスニーカーを履いており、ジュニアラッパーという感じである。型付けのレベルでうまくいっておらず、先輩がリアルタイムで何くれと指摘するが、これでは到底頭に入るまい。不毛である。(通常は合わせ終わってから指摘する)

夢だから情感を楽しもうと思って窓辺に腰掛ける。絵本のように鮮やかな青緑色のプールが波打っている。その向こうに同じ色の海も見えている。突然海の水位が上がり、プールを飲み込んで打ち寄せてくる。現実には、こんな急に水位が上がる津波だったら、ここにいては助かるまいなと思う。少し怖い。波は激しく高速に打ち寄せるが、水位は一定している。

腕のしびれを感じて目が覚める。

弟の病の夢

実家(存在しない建物や町)。弟が急病にかかり、僕は帰省のついでにタオルケットなどを買っていくことになる。事情で自転車を途中に停めたり、乗ったり、真っ直ぐ進まない。

弟の容態は悪く、全身がむくみ始めている。

母と弟と共に、親戚か誰かの家に着く。そこに医者を呼ぶ手はずのようだ。自転車の在りかについて母にややこしい説明をすると、母が混乱する。

一旦目が覚める。

僕は二階にいる。そこに医師が到着する。母が弟を運び込み、座椅子のようなベッドに寝かせる。弟は顔が赤黒くなり、身体は黄色く青ざめ、非常にむくんで体躯は縮まり、悪鬼のような体型になっている。誰もが危機感を隠せない。弟は苦しそうだが意識ははっきりしており、医師に伝えられることは自分で伝えている。

一旦目が覚める。

そのままその家に泊まり込むことになる。親戚や友人が家に集まっている雰囲気である。ややあって、僕は弟の様子を見に行くことにする。

三階に上がる。弟の横で、医師の先生も横になっている。先生は僕に気づくと起き上がろうとするので、「どうぞそのままで」と伝える。弟の外見はかなり回復を見せており、体躯は元に戻っている。目にも光が戻っている。僕は喜び「いける感あるやろこれ、うん」と言う。弟も笑顔を見せる。しかし肌が透けており、喉の辺りに黒い塊が見えたり、春菊のような野菜が皮下にあるのが見える。持ち直したと聞いて皆がドアから殺到するが、友人が「病人を疲れさせてはならない」と周りを制してくれる。僕は弟の手を取って励ます。

階段を下りながら、これらのことが虚構だと薄々分かっている。